夢に向かう大人の姿〈書評〉バッタを倒しにアフリカへ

DSC_0150

 

おはようございます。まいんどーです。

今日、住んでいる地区の防災訓練がありました。消防署の方たちに消火栓の扱い方、AED(自動体外式除細動器)の操作方法などを教わりました。近隣の人たちが大勢集まる中、消化器を操作して実際に発射してみる練習などもあったのですが、いざ「どうぞみなさんやってみてください、さあ!」などと振られると、少し気後れして視線をあらぬ方向に向けてしまうばかりでした。子供たちは嬉々として参加していましたが。

というわけで今回は、

前野ウルド浩太郎著「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社新書)

です。

 

【どういう本か】

「バッタに食べられたい」という少年時代からの夢を叶えるべく昆虫学者となった前野博士による、サバクトビバッタの大発生に苦しむ西アフリカ・モーリタニアでのフィールドワークの記録。

 

【3つのおすすめポイント】

 

① 旅立ちを前に

 

博士になったからといって、自動的に給料はもらえない。新米博士たちを待ち受けるのは命懸けのイス取りゲームだった。(106p)

 

大学院を出てポスドクと呼ばれる研究職についた前野博士ですが、それは1〜2年の任期付きで食いつないでいく不安定なものでした。安定した職を得るには研究して論文を出すことが必要でしたが、博士は国内の研究室で実験をすることよりも、アフリカに行ってあまり手がつけられていなかったサバクトビバッタのフィールドワークに賭ける決断をするのです。

研究者もお金がなければ生活できませんから、これは大変な勇気のいる決断だったと思います。それでも博士をアフリカに向かわせたのは、「本物を知りたい」という気持ちだったのです。

 

② バッタを追いかけて

「3m歩くと5匹バッタがいたぞ」(40歳/団体職員)

南のエリアからのミッション帰りの職員のとれたて情報を、ティジャニが朝一番で持ってきた。キタコレ、待ってた!野外にバッタがいなくても、自分で飼育すれば何かしらの研究はできる。この好機を逃してなるものかと、緊急ミッションに出発することにした。(127p)

 

モーリタニアの国立研究所に滞在することになった博士。研究の場となるサハラ砂漠は雨季と乾季がはっきり分かれており、乾季でバッタの食料となる植物が生えていない状態ではバッタ自体発見できません。しかし一回の雨で急に植物が目を覚まし、そこにバッタが出現することもあるようで、情報が入り次第現場に急行する必要がありました。しかし行ってみても、情報通りにバッタがいるとは限らなかったのですが。

 

③ 「神の罰」に挑む

このときを待っていた。群れの暴走を食い止めるため、今こそ秘密兵器を繰り出すときだ。さっそうと作業着を脱ぎ捨て、緑色の全身タイツに着替え、大群の前に躍り出る。

「さぁ、むさぼり喰うがよい」(345p)

 

紆余曲折の末、ついに博士は「神の罰」と称されるバッタの大発生に直面します。それはアフリカ各地に広範囲に被害をもたらす大災害でした。博士はここぞとばかりにバッタに食べられる夢を叶えるため、緑のタイツに着替え、バッタの大群の前に立ちふさがります。

こういうことを大真面目にやろうと思い、しっかり準備しているのがすごいですね。

 

【ろがるポイント!】

 

申し訳ないけど、一日エサを与えず腹ペコにしてやったら、私の手のひらから直接エサを食べはじめた。どうやら、私の安全性を認識してくれたようだ。かなり世渡り上手で賢い動物である。(186p)

 

バッタが思うように手に入らず思うように研究ができない博士は、ゴミムシダマシという昆虫が大量に手に入ったため、この研究をしようと考えます。しかしある日、ゴミムシダマシが減っていることに気がつきました。この犯人が、天敵のハリネズミだったのです。博士はあまりにかわいいのでハリネズミを飼育することにしました。

ハリネズミの写真が載っているのですが、これが本当にかわいい。

【まとめ】

モーリタニアでの研究生活は、実際は書かれている以上の苦労があるでしょう。そして先の保証のない立場で収入の不安を抱えながら、成果を挙げなければならないプレッシャー。その全てを面白おかしい文章で表現してしまう前野博士は素晴らしいと思いました。