生きる歓びとは何か?〈書評〉自分の運命に楯を突け

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おはようございます。まいんどーです。

少し前に大阪の万博公園に行ってきました。「太陽の塔」の内部公開が見たかったからです。

内部は思ったより狭かったですが、生物の進化の過程をモデルにした「生命の樹」の展示など実に見応えがありました。何よりも塔自体の存在感に圧倒されました。あの異様なデザインの塔が70年代からずっとあの場所に建っているのかと思うと不思議な気持ちになりました。

実は塔の3つの顔よりも、「地底の太陽」のデザインが好きで、お土産として売っていたミニチュアが欲しかったのですが、結構お高かったので断念しました。

というわけで今回は、

岡本太郎著「自分の運命に楯を突け」(青春出版社)

です。

 

【どういう本か】

岡本太郎が「週刊プレイボーイ」で連載していた人生相談をベースに加筆・再構成された本。

読者に対して本当の意味で生きているかを問いただす。

 

【3つのおすすめポイント】

 

① 生きている歓び

 

いちばんおもしろい人生とは、”苦しい人生に挑み、闘い、そして素晴らしく耐えること”。逆境にあればあるほど、おもしろい人生なんだ。

逆にうまくやろうとか、要領よく生きてやろうと考えると、人生はつまらなくなる。(47p)

 

人間は普通うまくやるために行動しようとするし、要領よくいい目をみるために(お金や地位や異性を手に入れる)学んだり自分を鍛えたりするわけです。もちろん純粋に興味を持って何かをやることもあるでしょうが、ほとんどの人がうまくやりたいと考えているでしょう。太郎はそれをまず全否定します。なぜならそれは他者からの評価を上げることによって得をしたいという「卑しい」考えを含んでいるからです。何よりもまず自分に正直であること。そして正直になることによって人生が苦しくなるのなら、それと全身全霊で闘ってこそおもしろい人生なのだというのです。

 

② 自分を貫く

 

キミのことは、キミ自身がいちばんよく知っている。なんでそれをほっぽり出して、ほかの人の無責任な批判のほうばかりにこだわるんだい?おかしいじゃないか。(72p)

 

先ほどの他者からの評価を得たい、ということとつながりますが、自分のことは自分が一番わかっているはずなのに他者からの批判を気にしてしまうのは、やはり自分への信頼よりも他者の評価を重視し、それに寄りかかって生きたいという弱々しい姿勢だということでしょう。

 

③ 生命感をつかみ取る

 

ぼくは”しあわせ反対論者”だ。

つまりね、簡単に言ってしまえば、人間が幸せと思っているときは、死がいちばん遠ざかったときだ。それは生きがいを失ったこと。そんなしあわせは、ぼくはほしくない。

 

太郎は始めたばかりのスキーの体験を例に出して、生きている実感について語ります。始めて二日目だというのに上級者コースからいきなり滑り降りて、転ぶ。それこそ滑り始めるときは死ぬんじゃないかという恐怖を感じます。しかしそういう場面で、生命が燃え上がる感覚を得るのです。

お金があり安全があり、人から見たら幸せと思われる状況こそ、生きる実感から最も遠いものだと。

自分の今までを考えてみても、思い出すのって何かトラブルがあった時とか、今までしたことのない新鮮な体験をした時のことなんですよね。何事もなく平和に過ぎた時間というのは記憶に残らなかったりするものです。

現代の日本は普通に働いていさえすれば生活には困りませんし、どこに行っても安全です。だからこそ、自分で意識しないと生きる実感からはどんどん遠ざかっていくよ、ということでしょうか。

 

【ろがるポイント!】

 

うまくなる必要は絶対になし。いわゆるうまい字なんて価値ない。それよりも、下手なら下手なりにのびのびと書く。そのほうが字は生きてくるものなんだ。(185p)

 

前から字がうまくなりたくて、今もペン字の本で時々練習しているぐらいですが……「面白い字を書くね」と言われることがあります。太郎に言わせれば、そのままでいいんだよということになるんでしょうか。

 

【まとめ】

太郎の言葉を読むたび、「本当の自分」とは何なのか、ということを突きつけられている気がします。それ以外の何かになる必要はないと言われている気がします。人生を「体験」ととらえ生身の自分でぶつかっていく勇気はあるのか。それとも習慣に流され、他者の評価に寄りかかって毎日を過ごしてしまうのか。

その選択はいつも目の前にあるのです。